恋は何パーセント?
90

エピソード 3 / 10

月曜日の朝。

数字はまだ見えていた。

ミンソは出社するなり、会社の男たちを観察した。

エレベーターで会った経営支援チームのキム課長。

0

隣部署のパク代理。

17

初めて見る新入社員。

6

会議室で会った開発チームの次長。

31

ほとんどが50にも届かなかった。 最高がいくつなのかは、まだ分からない。

席につき、メモを開いた。

男にだけ見える。 0〜? 人によって違う。

少し考えて一行加えた。

基準不明。

性格の点数かと思った。 でも普段から性格がいいと評判のキム課長が0なのだから、違いそうだった。

能力値? 健康? 残り寿命?

新入社員が6なのを考えると、最後の説はあまりに不吉だった。

ミンソはメモを閉じた。

分かったところでどうするの。 仕事しよ。

けれど意識しないようにすればするほど、余計に目に入った。

昼食を食べに出れば、男たちの頭の上に数字が浮かんでいた。

3 21 8

34

顔より先に数字を見るようになった。

(セリン)「代理」

ミンソはびくっとした。

(ミンソ)「うん?」

(セリン)「何見てるんですか?」

(ミンソ)「何も」

セリンはミンソの視線を追い、男社員二人の頭の上の空中を見た。

妙な顔をした。

(セリン)「『何も』って顔じゃなかったですけど」

(ミンソ)「本当に何でもない」

セリンは分かりましたという顔でうなずいた。 全然信じていない顔だった。

ミンソはまたモニターを見た。

あの数字が何なのかは分からない。 でも、ほかの人には見えていないらしい。

それだけは確かだった。

その日の夜。

退勤途中にヒョンジュから電話がかかってきた。 久しぶりだった。

「もしもし、ヒョンジュ」

— 仕事終わった?

「うん。今帰ってる」

— 話せる?

ヒョンジュの声はいつもより沈んでいた。 ミンソは歩く速度を少し落とした。

「どうしたの。何かあった?」

少し沈黙があった。

— 今日また銀行から連絡きた。

ミンソにはすぐ分かった。

ヒョンジュの元夫のことだ。

結婚前から借金があり、 それを隠していた男。

離婚はしたのに、片づいていない問題が時々ヒョンジュをまた捕まえに来る。

— ほんと、うんざり。

ミンソは何も言わず聞いていた。

— 私、結婚するときあいつに借金あるって知ってたら、絶対しなかった。本当に。

ヒョンジュはため息をついた。

— あの頃はお金の話をしたら、打算的な女みたいに見えそうで嫌だったの。

— 好きな人なのに、そこまで一個一個聞く必要ある?って思ってた。

— でも聞かなきゃだめ。

少し声が強くなった。

— ミンソ、これから男に会うなら、本当に全部聞きな。

— 年収いくらか、借金あるか、親の老後資金はあるか。

ミンソは小さく笑った。

「初対面から信用情報照会でもする?」

— 笑わないで。私、本気で言ってる。

ヒョンジュは笑わなかった。

— お金で愛は壊れるよ。

— お金で人も変わる。

— 最初は二人で何とかしようって言うの。

— でもそのうち、なんであなたの借金を私が返さなきゃいけないの、になって。

— なんでうちの親のお金まで入れなきゃいけないの、になって。

— 最後は顔を見るだけで借金を思い出すようになる。

ミンソは答えなかった。

ヒョンジュの言葉は思ったより長く残った。

— あなたは私みたいにならないで。

— 好きなのも大事。

— でも結婚する相手なら、条件も見なきゃ。

— 愛だけじゃ生活できないよ。

電話を切ったあとも、ミンソはしばらくスマホを持ったままだった。

愛だけじゃ生活できない。

昔なら、ヒョンジュがひどい目に遭ったからそう言うんだと思っただろう。

でも最近、周囲を見ていると、完全に間違っているとも思えなかった。

早く結婚した友人は夫と一緒にお金を貯め、両家の援助まで受けてソウルに家を買った。

ヒョンジュはお金で離婚した。

結婚というものをするなら、 好きという気持ち以外にも見るべきことはかなりあるらしい。

ミンソはふと思った。

お金も大事ではあるんだろうな。 多いに越したことはない。 少なくとも、問題のない人。

それくらいは見たほうがいいのかも。

すぐに考えるのをやめた。

その前に、会う男がいないけど。

二日後。

母から電話がかかってきた。

「うん」

— 土曜日、何するの?

母の声が妙に弾んでいた。

ミンソはすぐ警戒した。

「なんで?」

— お母さん、人をひとり見つけたの。

「また?」

— 今回は本当にいい人よ。

前回もそう言っていた。

「何歳?」

— 37。

とりあえず40ではなかった。

「仕事は?」

— S*の大企業だって。

ミンソは少し黙った。

母の声はさらに弾んだ。

— 大峙洞で育ったんだって。ご両親もまだあっちに住んでるって。

— 本人も蚕室に持ち家があるらしいわよ。

「家あるの?」

— うん。ローンは少しあるけど、今どきソウルに家を持っててローンがない人なんてどれだけいるのよ。

ミンソはソファに座った。

母が誇らしげに付け加えた。

— 写真も見たけど、見た目もちゃんとしてるわ。

「お母さん、なんで写真まで見てるの」

— 教会の仲いい人が紹介してくれるんだから。

「怖いんだけど」

— 今回は行きなさい。

「……」

— ソン・ミンソ。

母がフルネームで呼んだ。

— こういう人が毎回来ると思ってるの?

ミンソは答えなかった。

S*の大企業。 蚕室に持ち家。 両親は大峙洞。

37歳。

数日前のヒョンジュの言葉を思い出した。

条件も見なきゃ。

「写真送って」

電話の向こうで母が一瞬黙った。 すぐに声が大きくなった。

— 会うの?

「写真見てから」

— 分かった。今すぐ送る。

電話を切って10秒もしないうちに、写真が届いた。

スーツ姿の男だった。

イケメンというほどではないが、清潔感のある顔立ちだった。

ミンソは写真を拡大した。

特別惹かれもしない。 でも嫌でもない。

母にメッセージを送った。

会ってみる。

既読がついた瞬間、電話がかかってきた。

ミンソは出なかった。

土曜日の午後。

ミンソは待ち合わせ場所に少し早く着いた。

普段よりは身なりに気を使った。 だからといって、お見合い一回のために新しい服を買ったわけではない。

あまり着ていないワンピースを出し、 いつもより少し丁寧にメイクした。

鏡を一度見た。

これくらいでいいでしょ。

カフェに入って席についた。

待ち合わせ2分前。

ドアが開き、男が入ってきた。

写真で見た顔だった。

男はミンソを見つけ、近づいてきた。

その瞬間、 ミンソは男の頭の上を見た。

51

初めて50を超える数字だった。

ミンソは思わずもう一度確認した。

51

男が笑った。

(ジュノ)「ソン・ミンソさんですよね?」

(ミンソ)「はい。パク・ジュノさん?」

(ジュノ)「はい。はじめまして」

ジュノは椅子を引いて座った。 声も落ち着いていて、服装もきちんとしていた。 母の言う通り、ちゃんとした人だった。

最初は普通の話から始まった。

仕事。 通勤。 週末。

趣味。

ジュノは話が上手だった。 自分の話ばかりするわけでもなく、ミンソが話すとほどよく質問も返してくる。

思ったよりよかった。

コーヒーが半分ほど減ったころ、ジュノが聞いた。

(ジュノ)「ウェブ企画のお仕事なら、これからもキャリアは続けるつもりですか?」

(ミンソ)「はい。特別なことがなければ」

ジュノはうなずいた。

(ジュノ)「僕も共働きがいいと思ってます」

ミンソは深く考えず笑った。

(ミンソ)「今どき一馬力で暮らすのは大変ですしね」

その瞬間、数字が変わった。

58

ミンソの視線が止まった。

見間違い?

ジュノはそのまま話を続けた。

(ジュノ)「僕も家は買ってるんですけど、ローンがちょっとあって」

(ミンソ)「今どき家を買ってローンがない人のほうが珍しいですよね」

63

また上がった。

ミンソはコーヒーカップを持ち上げた。

変だ。

(ジュノ)「僕は、夫婦になったら結局ひとつのチームだと思うんです」

(ミンソ)「チーム?」

(ジュノ)「はい。お金を完全に別々で管理するより、一緒に計画して、早く資産を作ったほうがいいんじゃないかなって」

ミンソはうなずいた。

言っていること自体は、もっともに思えた。

ジュノは自然に続けた。

(ジュノ)「両家も余裕があるなら、最初に少しずつ助けてもらえたらいいですし。長く利息を払うより、そのほうが結局夫婦の資産として残るじゃないですか」

あ。

そっちか。

ミンソにはジュノが何を言いたいのか分かった。

自分の家のローン。 結婚したら、妻側の家からもどれくらい援助が期待できるか。

露骨には聞かない。

ミンソはジュノを一度見た。

なかなかやるな。

とはいえ、完全に間違った話でもなかった。

ヒョンジュの言葉がまた浮かんだ。

結婚する相手なら、条件も見なきゃ。

ミンソの両親は特別裕福ではなかったが、困っているわけでもなかった。 ひとり娘が結婚するなら、ある程度援助する余裕はあった。

ミンソは正直に言った。

(ミンソ)「うちの両親も、結婚するときはある程度助けるつもりみたいです」

数字が動いた。

71

今度ははっきり見た。

上がった。

ジュノの表情も少し柔らかくなった気がした。

(ジュノ)「ご両親もソウルですか?」

(ミンソ)「はい」

(ジュノ)「近いんですか?」

(ミンソ)「車で30分くらいです」

(ジュノ)「いいですね」

ジュノが笑った。

(ジュノ)「僕、将来子どもができたら、両家の助けもある程度必要だと思ってるんです」

ミンソも少し笑った。

(ミンソ)「もう子どもの話までいくんですね?」

(ジュノ)「僕、けっこう現実的なんです」

それは確かにそうだった。

少しすると、今度は教育の話を自然に持ち出した。

(ジュノ)「僕、大峙洞で学校に通ってたんです」

(ミンソ)「母から聞きました」

(ジュノ)「もうそこまで伝わってるんですか?」

二人とも笑った。

(ジュノ)「だからかもしれないけど、子どもができたら教育環境は少し気にしたいですね」

(ミンソ)「私も教育は大事だと思います」

78

ジュノはコーヒーを一口飲んだ。

(ジュノ)「お母さんが働いてるからって、子どもの教育を諦める必要もないと思ってて」

ミンソはその言葉を少し考えた。

母親も働く。 子育てもする。 教育も見る。

聞いていると、結局女のほうがやることがかなり多い気もした。

でもジュノはすぐに付け加えた。

(ジュノ)「もちろん夫も一緒にやるべきですけど」

答えとしては完璧だった。

ミンソも笑った。

(ミンソ)「それならいいですね」

83

また上がった。

ミンソはもう、ジュノの話より数字のほうが気になり始めていた。

最初は51だった。

自分と考えが合うと分かるたびに数字が上がる。

そしてお見合いが終わるころ、ジュノが先に言った。

(ジュノ)「今日、思ってたよりすごく楽しかったです」

数字は

87

だった。

ミンソはジュノを見た。

(ジュノ)「ミンソさんさえよければ、来週も会いたいです」

90

その瞬間、 この数日で見た数字が一気に頭をよぎった。

会社の人たち。 道を歩く男たち。 コンビニの店員。

ほとんどが50にも届かなかった。

そして今。

自分を気に入ったと言う男。

90

ミンソは初めて、ひとつの可能性を思いついた。

まさか。

この数字。

私への好感度なの?